水平な場所に裸足で直立すると、ツマ先を開いた状態で安定して立てるといわれています。
これは、斜面に立った場合も同じです。では、スキー靴を履いた場合はどうなるでしょう。
通常、スキー靴を履くと、ツマ先の開きは少し狭くなります。そして、このときのヒザ入れ方向は、親指の方向になります。
そこで、スキー滑走の都合のよい状態、すなわちスキー板を平行に揃えるためには、ヒザを絞り込むような力を絶えず加えなければなりません。
また、スキー板が平行になった状態では、前傾時のヒザ入れ方向は内側になります。
このような症状は、人間の足の骨格上・生理上、またスキー靴の設計上、当然の帰結となっていました。
以前の脚の捻りによる回し込みを主流とするスキーテクニックにおいては、こうしたスキー靴の特性は何ら問題がありませんでした。
というのも、従来のスキーテクニックにおいてスキー板を回す動作は、ヒザの捻り込みによる回旋動作によって行われていたからです。
ところがスキーテクニックの進化は、こうしたスキー靴の性能が逆にデメリットとなってきています。
現在のスキーテクニックでは、スキー板の持つサイドカーブを有効に使った切れるターンを行うために、両足荷重による脚の倒し込みでスキー板の方向付けを行うようになっています。
このようなスキー操作において、前傾動作によってヒザが内側に入ることは、パワーロスに繋がります。
また、前傾動作でヒザが内側に入ると、雪面からの抵抗を大きく受ける現在のスキーではヒザに大きな力がかかり、脚への負担となります。
つまり、前傾時にスキー板と同一方向になるヒザ入れがスキー靴に要求されるわけです。
前傾時のヒザ入れ方向を真っ直ぐにするためにレクザムが採用した設計とは、スキー靴の中で足が自然に外側を向いた状態を作り出すオフセットラスト。
荷重が集中するカカトのセンターを中心として、足の中心線が外側に向くように足型を設計しています。
つまり、自然に立った時につま先が軽く開く、その状態をスキー靴の中で再現しているのです。
これにより、スキー靴を履くだけでスキーが自然に揃いやすくなり、ヒザも真っ直ぐに入りやすくなります。
さらに、雪面からの抗力をヒザが正面から受け止めるため、長時間のスキーでも脚への負担が少なくなります。
レクザムはスキー靴の開発において、靴の本場であるオーストリアのシューマイスターと共同研究を進め、A-ONE CONCEPTを完成させました。
シューマイスターである彼らがスキー靴のチューンアップを行う時、ほぼ9割において手直しするポイントがあるといいます。
それは「スキー靴の中に正しく足を収め、足の生理を妨げずに快適な運動を行うために必要不可欠な手直し」とのこと。
運動する足を効果的に固定すると共に、足の障害に繋がる不必要な圧迫を改善。
このシューマイスターとしての長年の実績から導き出した理想のラスト設計は、これまでもマイナーチェンジのたびにレクザムに取り入れてきました。
A-ONE CONCEPTは、言わばその成果の総決算として誕生した、新しいラスト設計。
まさしく、足の健康を考えたシューマイスターの思想を具現化したスキー靴です。
人間の足のカタチは次の3つに大別されるといいます。
最も多いのは、第一指が一番長い<エジプト型>で約70%。
第二指が第一指より長い<ギリシャ型>は約25%。
バレリーナに最も適した足と呼ばれる、指の長さがほとんど同じ<正方型>は約5%。
ところが、ほとんどスキー靴のツマ先は、ファッション性と生産性を最優先した設計のために、半円形をしています。
これでは、人間の足には合いません。
スキー靴の当たり解消のための加工の80%は、親指付け根・小指付け根と言われるのも、こうした人間の足の形状を無視したスキー靴の設計にあるといっても過言ではないでしょう。
足の指先が窮屈な靴を履くと、平行感覚が鈍くなります。
運動能力に大変優れたスポーツ選手でも、足先を包帯でキツク拘束すると、普段なら簡単に渡れる平均台を歩けなくなります。
ましてやスキーでは、足の指先が内側に強く押された状態では、ヒザ入れ方向がズレ、スキーの舵取りにも悪影響がでます。
また、足の障害として特に女性に注目される<外反母趾>も、靴のツマ先形状と足型の不一致によって引き起こされます。
また、この<外反母趾>の進行プロセスを分析すると、<開帳足>から<外反母趾>になることもあります。
<開帳足>では足裏のヨコアーチが低くなり、そのために親指は広がろうとします(内反)。
ところが、靴を履くと親指は広がることができないために、関節の部分で足の中心方向に曲がり(外反)、外反母趾になるというケースです。
いずれにせよ、ツマ先部分が窮屈な靴は、足の障害に繋がる恐れがあるわけです
<A-ONE CONCEPT>のラスト設計は、人間の足を重視した形状。
親指とカカトの中心線を結ぶ足の機能線を重視する、靴の世界では著名な19世紀の解剖学者マイヤーの考え方を、スキー靴に応用しました。
この利点は、親指が真直ぐに伸ばせること。
足の内側で最もでっぱている親指付け根とカカトの内側の2点を結んだラインをツマ先まで延長し、指先を結ぶラインと交差させる<マイヤーライン>を想定して基本ラストを設計。 親指だけでなく、小指も真直ぐに伸ばせる、運動中にバランスの取りやすいスキー靴を実現しました。
スキー靴において最も重要なカカト部分のホールドを高める、深いヒールポケット設計。
カカトのピークを高く設計することで、踵骨およびその上に乗っている距骨、さらにはクルブシ関節の位置を正しく保ち、正確なヒザ入れを可能にします。
スキーにおける前傾運動で身体を一定に保つために重要な働きをするアキレス腱は、足の中でも最もデリケートな部分です。
過度な圧迫はアキレス腱自体の損傷にもつながります。カカトのピーク位置は、この圧迫を防ぎ、足の痺れを防止します。
距骨外側部分の設定クルブシは距骨と脛骨をつなぐ関節です。 そのため、クルブシ関節の土台となる距骨がシェルによって外側から圧迫を受けると、クルブシは内側の方向にずれるため、ヒザに大きな負担がかかることになります。
さらに、正確なスキー操作の支障にもなります。
クルブシ関節を正しい位置に保つために、距骨外側部分に余裕を設定することにより、ヒザへの負担を軽減するとともに、正確なスキー操作を実現します。
舟状骨の上部分には太い血管が通っています。そのため、ここを圧迫すると足全体の痺れにつながり、足裏感覚や足の運動能力低下の原因にもなります。さらには、ツマ先部分への血行不良は、指先の冷えの原因ともなります。
舟状骨部分に余裕を設定することにより、甲部のあたりを解消するとともに、足の痺れ防止と、足冷え対策の向上も実現します。